本当に知らないから。
優大くんに尋ねたこともないし、優大くんが話すこともなかった。
「若い人の付き合いかたは分からないなぁ。アレだね、おじさんの感覚とは違うんだね?オレが奥さんと付き合うって時には、自己紹介の時に職種も話していたけれどね?」
田谷さんの言葉に、
「まぁ、人それぞれだから」
と、薫おじさんは言ってくれる。
「あ、でも。もう出張期間が終わるらしいので、そろそろ「黒猫」にも来るかもです」
私は田谷さんにそう言って、その場から離れた。
優大くんのこと。
あまり知らないのは、自覚している。
例えば、どこに住んでいるのか知らない。
多分、この近所なのかなとは思っているけれど。
それに仕事内容も知らないし、出身が東京なのか地方なのかも知らない。
何人家族で、きょうだいが何人いるとか、血液型とか、誕生日とか、好きなもの、嫌いなもの……、まだまだ知らないことはたくさんある。