年が明けて、ある年。
冬。
「今年は暖冬って言われてるけれど、やっぱり寒いよねー」
「黒猫」で、田谷さんがいつものようにホットコーヒーを飲んでいる。
「そうですね。……でもあんまり雪が降らないですね」
私は帰って行ったお客様のテーブルを片付けながら、田谷さんに返事をした。
「あれ?深雪ちゃん」
田谷さんが言う。
「何か、オシャレなイヤリングしてるじゃない?可愛い」
「あ、ありがとうございます」
私は出来るだけ何でもないふうに答えた。
でも。
心の中では、ありがとう!と叫びたいくらいに嬉しい気持ちでいっぱいだった。
イヤリング。
チカッとした石が光る、シンプルだけど存在感のあるイヤリング。
あの日。
優大くんと付き合えることになった、クリスマス当日。
優大くんがプレゼントとしてくれたものだった。