もっと。


もっと、一緒にいたくなる。


欲深い気持ちを抑えながら、
「ここです」
と答えた。



「じゃあ、オレはここで」

「あっ、あの、はい」

武岡さんはニッコリ笑って、
「また『黒猫』で」
と言った。


「はい」
と私も笑顔を返す。




でも……。





私は歩き出した武岡さんのトレーニングウェアの裾を引っ張ってしまった。


「……?小森さん?」


「あっ、あの、あの、あのっ」


「?」



お客様と従業員。

私達の関係は、それだけ。


でも、私は……。


もう少しだけ武岡さんに、近づきたくて。






「あのっ、おと、お友達になってくれませんか?」


「えっ?」


武岡さんの目が丸くなる。



あぁーーーっ、やっぱり言わなきゃ良かったのかな!?

武岡さん、困ってる?


困ってるよね?



「あっ、ごめんなさい。忘れてください」
ついつい恥ずかしさのあまり、早口になる。