「あの、あの、私!先程お越しいただいたカフェ「黒猫」の従業員で、小森と申します!」
私は慌ててしまって、何故か自己紹介までしてしまった。
お客様は驚いた表情で、
「……小森さん」
と繰り返した。
それから、
「あの、それって……オレが忘れていった……?」
と、遠慮がちに文庫本を指差す。
「あっ!はい!そうです!お忘れ物です!!」
私はお客様に文庫本を手渡す。
お客様は、
「ありがとうございます。忘れたことに途中で気づいて引き返していたら、オレの本を持って、じっと立ち止まってる人が見えたので、声をかけてしまいました」
と、笑顔で話してくれた。
それから、
「お忙しいのに、追いかけてくださってありがとうございました。アイスコーヒー、美味しかったです。ごちそうさまでした」
と、頭を下げた。
丁寧な人だなぁ。
私も慌ててお辞儀をして、
「いえいえ!見つけてくださってありがとうございました!!お渡しすることができて良かったです」
と言った。
その時。