田谷さんは大笑いして、
「オレ、広告のお兄ちゃん見て、うっとりしないよ?」
と言った。
「……うぅ、でも分からないじゃないですか。うっとりするかも。イケメンだし、この人」
苦しまぎれの言い訳を言う。
田谷さんは豪快に笑ってから、
「まぁねー、イケメンだよねー!『シー・ファンキーズ』の……、誰だっけ、この人?」
と、首を傾げた。
あー、「シー・ファンキーズ」って、聞いたことあるグループ名だな。
大人気の人達だよね?
それでも私はこの雑誌の広告のイケメンが、「シー・ファンキーズ」のメンバーであることも、そしてメンバーの誰なのかも、分からない。
ふと顔を上げると。
さっきの読書をしている男性のお客様が、こちらを見ていた。
私と目が合うと、帽子を被って、また読書に戻る。
……?
カウンターの中から薫おじさんが雑誌を見て、
「それ、周くんじゃない?」
と、教えてくれた。