私は急いで新しいおしぼりと、テーブルを拭くための布巾を持って行った。
布巾でこぼれた水を拭きつつ、
「田谷さんのお洋服とかは濡れていませんか?」
と尋ねると、
「大丈夫。ありがとう。本当にごめんね」
と、田谷さんは申し訳なさそうに笑った。
それから、
「これ、この雑誌、見て」
と言って、田谷さんが持っている雑誌を開いて、私に見せる。
見開きで見せてくれたので、どこを見ていいのか悩んだ。
「カッコいいよねー」
と田谷さんが言って、左のページに視線を移した。
そのページに載っている広告の男性のことなのかと思う。
「カッコいいですね……、えっと、でも、私、芸能人に疎くて」
正直に答えた。
イケメンが車の前に立っている写真。
「……えっ!?違う、ちがうよ!深雪ちゃん、そっちじゃなくて!」
「え?」
「オレが『カッコいい』と言ったのは、車のこと!ビックリするじゃん」
「あっ、そうですか!」
私は自分が赤くなっていくことが分かった。