私はとりあえずお客様を、窓際の奥のボックス席に案内した。
周りを見回した感じがしたから、もしかしたら待ち合わせでもしているのかもしれない。
ホッとした素振りをしたのは、約束している人より先に着いたからかも。
そう思って、出入り口がよく見える席にしようと思った。
窓際の席にしたのは、単純に私が好きな席だからだった。
窓からの景色を見ながら、お茶が出来ることは嬉しく思うから。
席に案内すると、メニュー表を手渡した。
「こちらがメニューになります。お決まりでしたら、またお呼びください」
お客様はその時私をじっと見てから、
「ありがとうございます」
と言って、メニュー表に視線を落とした。
アイスコーヒーを頼んだそのお客様は、注文し終わるとデニムパンツのお尻部分のポケットから、何かの本を取り出した。