「違うけど……」

横断歩道の信号が赤くなる。

私達は足を止めて、しばらく待つ。


「でもさー、最近の真希、可愛くなったよね」

「えっ、本当!?」

「ほんと、ほんと!なんていうの、レベルアップした感じ?前から可愛いけど、磨きがかかった感じがする」


あまりお世辞を言わない美波に言われると、ものすごく嬉しい。


「何か幸せなことがあったら、教えてね」


「……まだ、だけど。私、週末に告白するつもりなんだ」


思わず言ってしまう。



「えっ、そうなの?好きな人、やっぱりいたんだ?」


私は頷く。


「まだ告白しないつもりだったんだけど。もしかしたら、今って可能性があるのかなって」


「頑張りな!真希には幸せになってほしい!」


美波は左手で私の背中をパンっと軽く叩いた。


背中に。

指輪の感触があった。


美波の結婚指輪の、感触。




「いいなぁ」
私はため息が出る。