この人ともっと話したい。
不思議とそう思わせる女性だと思った。
だから。
ついつい、
「私も、週末に好きな人と会えるんです」
と、のろけてしまった。
「それは楽しみですね!」
女性店員がニッコリ笑ってくれる。
「深雪ちゃん、ちょっと手伝ってー」
カウンターの中から、他の店員が彼女を呼んだ。
「あっ、ごめんなさい。……ごゆっくり!」
私に頭を下げて、「深雪」さんは去って行く。
感じのいい人と話すと、心がぽかぽかする。
ウインナーコーヒーも美味しく飲んで、私は「黒猫」を後にし、美容院へ急いだ。
数日が経った。
ランチタイム。
「真希ー、あんた今日、すっごく機嫌いいね」
会社の同期の美波が、私の顔を覗きこむ。
今日は美波と外でランチの約束をしていた。
私達は会社の近所にある、イタリア料理店を目指して歩いている。
「えー、いつもと変わらないよ」
私はニコニコ笑って返した。
「いやー、明菜ちゃんも言ってたよ?彼氏が出来たんじゃないかって。結構噂になってるし。……ねぇ、そうなの?」
明菜ちゃんめ……。
すぐ噂を流す曲者だな。