翌日。
いつもよりも少し張り切った恰好で出勤した。
だって今日は仕事帰りに美容院に行くから。
昨夜、慌てて予約を入れた。
少し髪の毛を切ってもいいかもしれない。
カラーリングして、ヘッドスパもしてもらおう。
「あれぇ?今日はデートですかー?」
明菜ちゃんがニコニコ笑って近寄ってくる。
「どうでしょう?」
私は曖昧な返事をした。
デートではない。
でも頭の中では、デートに行く準備をしているようなものだ。
週末。
私達の地元でのデート。
「いいなぁ。私もオシャレしてデートしたーい。……真希さん、知ってましたかー?」
「何?」
「羽山さん、恋人がいるそうですよー。残念ですよねぇ」
明菜ちゃんは小声で、ため息まじりに言った。
「そうなんだ」
内心では、やっぱりね、と思っていたけれど、明菜ちゃんにそれは言わない。
「彼氏が欲しいですー。でも、変な奴は嫌なんですよねー。最低限の条件はクリアしててほしいって思うんです」
……条件。
最低限とか言いつつ、何箇条あるの?
その条件は。
「……妹がいるんですけど」
明菜ちゃんは、なかなか自分のデスクに帰らない。