「弘正さん、待たせてごめんなさい」
そう前置きして、私は弘正さんの顔を見た。
秋も深まってきた頃。
「黒猫」で、弘正さんとコーヒーを飲んでいる。
「……うん、いいよ。大丈夫だよ」
弘正さんはふんわりと笑った。
あぁ、大好きだなって思った。
「……ただいまー」
夜9時。
我が家の玄関に帰ってきた。
あと何回この玄関で、「ただいま」って言うんだろう?
ふと、そう思った。
「うっそーーー!?」
リビングから真の悲鳴。
「えっ!?」
私は驚いて、乱暴に靴を脱いでリビングに駆けこむ。
「何、何よ!?どうしたの!?」
私を見つけた真は、泣きそうな顔でこう言った。
「優大に、熱愛報道だってぇ……。深夜の手繋ぎデートだってぇ……!」