ある年の1年前……。
秋。
「理想の女性のタイプをお伺いしてもいいですか?」
ある情報番組の収録。
オレの所属しているダンスボーカルグループ、「シー・ファンキーズ」の、少し前に出したダンスナンバーがロングヒットしているので、改めて取材を受けている。
「シー・ファンキーズ」のメンバーは、全員で5人。
今日はみんな揃っての仕事が立て続けにあって、この取材のあとも、歌番組の収録が控えている。
「じゃあ、優大さんからお願いします」
インタビュアーの女性が、にっこりオレを見つめる。
「えっ、僕ですか?」
まさか自分が1番はじめに指名されるとは思っていなかったので、オレは少し驚いてしまう。
うっかり出身地の関西の言葉のイントネーションで返事をしそうになった。
デビューが決まった16年前。
「シー・ファンキーズ」のメンバーで、決めたんだ。
仕事の時には全員、出身地の言葉は使わないって。
あの当時はうまくいかないことも多くて、地元に帰りたいと泣いているメンバーもいた。
強くなろう、と約束した。
そして16年。
オレ達はここ、東京でまだ頑張っている。
インタビュアーが、
「優大さん?」
と不思議そうな顔をしたので、慌てて質問の答えを探す。
これまでにこのテの質問はかなり答えてきた。
今までは何て答えていたっけ?
「……苺」
当たり障りのない答えを頭の中で探していたのに、口からこぼれたのは本音だった。
「『苺』?」
女性はキョトンとした。