「ここが事件現場……」

車を降りたモミジが呟く先には、ごく普通の、どこにでもある住宅街があった。その中の一つには、未だに警察の黄色のテープが貼られている。

フィオナたちがその家の前に立ち、中に入るために手袋などをしていると、「あんたら刑事さんかい？」と犬を連れたおじいさんが声をかけてくる。

「まあ、警察関係者ですね……。どうかされましたか？」

エヴァンがニコニコしながら訊ねると、おじいさんは「ここの夫婦、殺されたんだってね。でもね、あんな奴ら恨まれたって仕方ない人たちなんだよ」と言う。その言葉に、フィオナは殺害された二人の人間の資料を頭の中に思い浮かべた。

殺害されたのは、この家に住む二人の夫婦であるカンナ・スコットとチューベローズ・スコットだ。二人はレストランを経営していたが、あまり繁盛はしておらず、ここ二年ほどで生活は一気に苦しくなっており、家を手放すことを考えていたそうだ。