メニュー表を視線でなぞりながら適当に羅列しようとしたところで、彼女が慌てたように声を上げる。
「ちょちょちょ、待って下さい! 頼みすぎですって!」
「美波さんが言ったんじゃん、何でもいいですよって」
「言いましたけど! ていうか、普通人に奢ってもらう時ってもうちょっと遠慮しません!?」
冗談めかしたトーンで指摘されたものの、内心どきりとした。
一瞬言葉に詰まった僕に、彼女はすかさず正解を当ててくる。
「航先輩、さてはそれが目的ですね?」
相手の目的を断定できないうちに、こちらの狙いがバレてしまった。
彼女が執拗に僕の教室へ来ていたのは周知の事実だし、正直迷惑していた――というニュアンスのことをそれとなく周りに認知させることができれば、少なくともイメージダウンを免れるだろうか。
脳内でそこまで勢いよく逆算したところで、僕は両手を組み彼女へ視線を合わせる。
「そうだよ。悪い?」
「ちょっとー、後輩にたかるのやめて下さいよ」
頬を膨らませた彼女に、「言いたいなら言いふらせばいい」と伝えれば、不思議そうな顔をされた。
「言うって、何をですか?」
「僕がこういう人間だって、周りに言いたいなら言えばいいよ」