そして今日は大泊瀬皇子が韓媛に会いにきてくれることになっている。
彼の場合事前に分かる時もあれば、突然やってくる日もある。
なのでいつ彼がきてもいいように、この家の使用人達もそのつど柔軟に対応してくれている。
大泊瀬皇子はその後、時間を見つけては彼女に度々会いにきていた。
ただ彼は大和の皇子なので、政りごとに関してもあれこれと動いている。そのことに関しては本当に凄いなと韓媛も感心していた。
「でもまさか、これほど良く会いにきてくれるのはちょっと意外だったけど……」
だが大泊瀬皇子のその気遣いは、韓媛としても本当に有り難くて、いつも嬉しく思っていた。
韓媛がそんなことを考えていた時である。彼女の部屋に誰かがやってきた。
「韓媛、俺だ。今中に入って良いか」
どうやら大泊瀬皇子がやってきたようだ。韓媛も意外にくるのが早いなと思った。
「大泊瀬皇子、今入り口まで行きますね」
彼女はそういって、慌てて入り口の前まで行き彼を出迎えた。
大泊瀬皇子も彼女に出迎えられてとても嬉しそうだ。
そして部屋の中に入ると皇子は韓媛を優しく抱き締める。2人はこの瞬間が本当に幸せだなといつも思っている。
「韓媛、元気にしていたか」
大泊瀬皇子は韓媛を抱き締めたまま、そう彼女にささやく。
韓媛もそういわれて嬉しくなり「はい、お陰さまで」といって彼の胸に顔をくっつけた。
それから彼女は皇子を部屋の中へと招き入れた。そして2人は床に腰をおろす。
韓媛は今日皇子がくると聞いていたので、彼を出迎えるためにお酒を事前に持ってきてもらっていた。
大泊瀬皇子は訪問の際に時々手土産を持ってきてくれることがある。今日はどうやら狩りでとった肉と、野菜をもってきてくれたようだ。
韓媛は皇子からその手土産を受け取ると、塩漬けした獣肉は少し生臭さが残っており、野菜は今朝方とってきたのか新鮮な香りが漂ってきた。
「まぁ皇子、いつもすみません。使用人に渡しておきますね」
韓媛はすぐさま部屋の入り口まで行き、そこから人を呼んだ。そして大泊瀬皇子からの手土産を落とさないよう、慎重に使用人に渡した。
そんな韓媛の対応を大泊瀬皇子はとても微笑ましく見ていた。
そして使用人の女性は「では次回の食時の時にお出ししますね」といったのち、そのままこの場を離れていった。
韓媛はその後大泊瀬皇子の元に戻ってきた。
それから須恵器の器にお酒をつぎ、彼に差し出す。
皇子も彼女からお酒を受け取るとそのまま一気に飲み干した。
その後は2人は、お互いの近況の話し等をして会話を楽しむことにした。
それからしばらく時間が経ったのち、大泊瀬皇子は韓媛を自身に引き寄せた状態のまま、彼女にある提案を持ちかける。
「お前も父親が亡くなって色々気苦労も多かっただろう。そこで気分転換に2人で少し外に出かけないか」
「え、2人でですか?」
韓媛は大泊瀬皇子にもたれかかったまま、彼の話しを聞いていた。
「あぁ、この近くだと葛城山に行ってみるのはどうだ?」
葛城山なら割りと近いので少し馬を走らせればすぐに辿りつく。気温もだいぶ暖かくなってきたので、天気が良ければさぞ気持ちいいことだろう。
「はい、それは構いません。私も久々に少し遠出してみたいです」
韓媛はそういってとても嬉しそうに微笑んだ。
大泊瀬皇子も彼女の同意がえられたので、行き先は葛城山にすると決めた。
「当日は俺がここまで迎えに行く。それから2人で馬に乗って行くとしよう」
彼はそういって韓媛の頭に優しく口付ける。
「せめて俺といる時ぐらいは、お前にも心安らいでもらいたい……」
大泊瀬皇子はさらに彼女にそう優しくささやいた。
韓媛も彼にそういってもらえて本当に自分は幸せだなと思う。
こうして2人は、後日葛城山に出かけることにした。
彼の場合事前に分かる時もあれば、突然やってくる日もある。
なのでいつ彼がきてもいいように、この家の使用人達もそのつど柔軟に対応してくれている。
大泊瀬皇子はその後、時間を見つけては彼女に度々会いにきていた。
ただ彼は大和の皇子なので、政りごとに関してもあれこれと動いている。そのことに関しては本当に凄いなと韓媛も感心していた。
「でもまさか、これほど良く会いにきてくれるのはちょっと意外だったけど……」
だが大泊瀬皇子のその気遣いは、韓媛としても本当に有り難くて、いつも嬉しく思っていた。
韓媛がそんなことを考えていた時である。彼女の部屋に誰かがやってきた。
「韓媛、俺だ。今中に入って良いか」
どうやら大泊瀬皇子がやってきたようだ。韓媛も意外にくるのが早いなと思った。
「大泊瀬皇子、今入り口まで行きますね」
彼女はそういって、慌てて入り口の前まで行き彼を出迎えた。
大泊瀬皇子も彼女に出迎えられてとても嬉しそうだ。
そして部屋の中に入ると皇子は韓媛を優しく抱き締める。2人はこの瞬間が本当に幸せだなといつも思っている。
「韓媛、元気にしていたか」
大泊瀬皇子は韓媛を抱き締めたまま、そう彼女にささやく。
韓媛もそういわれて嬉しくなり「はい、お陰さまで」といって彼の胸に顔をくっつけた。
それから彼女は皇子を部屋の中へと招き入れた。そして2人は床に腰をおろす。
韓媛は今日皇子がくると聞いていたので、彼を出迎えるためにお酒を事前に持ってきてもらっていた。
大泊瀬皇子は訪問の際に時々手土産を持ってきてくれることがある。今日はどうやら狩りでとった肉と、野菜をもってきてくれたようだ。
韓媛は皇子からその手土産を受け取ると、塩漬けした獣肉は少し生臭さが残っており、野菜は今朝方とってきたのか新鮮な香りが漂ってきた。
「まぁ皇子、いつもすみません。使用人に渡しておきますね」
韓媛はすぐさま部屋の入り口まで行き、そこから人を呼んだ。そして大泊瀬皇子からの手土産を落とさないよう、慎重に使用人に渡した。
そんな韓媛の対応を大泊瀬皇子はとても微笑ましく見ていた。
そして使用人の女性は「では次回の食時の時にお出ししますね」といったのち、そのままこの場を離れていった。
韓媛はその後大泊瀬皇子の元に戻ってきた。
それから須恵器の器にお酒をつぎ、彼に差し出す。
皇子も彼女からお酒を受け取るとそのまま一気に飲み干した。
その後は2人は、お互いの近況の話し等をして会話を楽しむことにした。
それからしばらく時間が経ったのち、大泊瀬皇子は韓媛を自身に引き寄せた状態のまま、彼女にある提案を持ちかける。
「お前も父親が亡くなって色々気苦労も多かっただろう。そこで気分転換に2人で少し外に出かけないか」
「え、2人でですか?」
韓媛は大泊瀬皇子にもたれかかったまま、彼の話しを聞いていた。
「あぁ、この近くだと葛城山に行ってみるのはどうだ?」
葛城山なら割りと近いので少し馬を走らせればすぐに辿りつく。気温もだいぶ暖かくなってきたので、天気が良ければさぞ気持ちいいことだろう。
「はい、それは構いません。私も久々に少し遠出してみたいです」
韓媛はそういってとても嬉しそうに微笑んだ。
大泊瀬皇子も彼女の同意がえられたので、行き先は葛城山にすると決めた。
「当日は俺がここまで迎えに行く。それから2人で馬に乗って行くとしよう」
彼はそういって韓媛の頭に優しく口付ける。
「せめて俺といる時ぐらいは、お前にも心安らいでもらいたい……」
大泊瀬皇子はさらに彼女にそう優しくささやいた。
韓媛も彼にそういってもらえて本当に自分は幸せだなと思う。
こうして2人は、後日葛城山に出かけることにした。