「あぁ、それは大丈夫だ。恐らく大王も反対はしない」
大泊瀬皇子は葛城円にそう答えた。大和の皇族ですらたまにしか使っていない場所だ。そこに葛城の者を招いたからと言って、大和が特別困る事もない。
(韓媛が吉野に行った事がないのなら、あの辺りの景色を是非見せてやりたい)
大泊瀬皇子は、韓媛もこの話しを聞いたらさぞ喜ぶだろうと思った。彼女は子供の時、この時期から冬に移り変わる頃がとても好きだと言っていた。
「まぁ、大泊瀬皇子がそうおっしゃるなら、その提案に有り難く乗らせていただきます。韓媛もきっと喜ぶ事でしょうし」
こうして大泊瀬皇子は、葛城円の部屋を後にした。
そして帰る前に、韓媛に先程の話しも兼ねて、彼女の部屋に寄ってみる事にした。
韓媛は大泊瀬皇子からの提案を聞き、その場でとても驚いた。皇族の離宮など、今まで一度も行った事がない。
それに大和の皇族がわざわざ離宮を作る場所だ。さぞ今の時期は、紅葉も綺麗に見えるのだろう。
「まぁ皇子、それはとても素敵な提案ですね。私も是非その離宮に行ってみたいです」
大泊瀬皇子の予想どおり、韓媛は彼の提案を聞いてとても喜んでいるようだ。
「昔お前はこの季節が好きと言っていただろう。吉野の離宮はこの時期とても紅葉が綺麗だから、お前も喜ぶと思った」
「大泊瀬皇子、そのような昔の話しを良く覚えられてましたね」
それは昔2人が一緒に遊んでいた時に、韓媛が大泊瀬皇子に話した事だ。
(あれは皇子が落とし穴を作っていた時だわ。その上に落ち葉をたくさん積めば分からないと言って)
「確か大泊瀬皇子が、私が同族の男の子達に苛められていて、その仕返しにと皇子が落とし穴を作っていた時でしたね……」
「あぁ、葛城のガキ共を落とし穴に落とした時は、かなり痛快だったな」
大泊瀬皇子は少し意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
当時韓媛もそんな皇子を見て、さすがに呆れていた。その後男の子達は大人に助けられたが、大泊瀬皇子に関しては、大和の大人達にこっぴどく叱られる事となる。
(でもその後、不思議と私が男の子達から苛められなくなったよね。それにその男の子達とも今は全然会わなくなったわ……)
この件はその後、彼女の父親の葛城円にも伝わる事となった。
そのため、韓媛はもしかすると父親がその後上手く対応したのかもしれないと思った。
「そんな悪戯をしていた大泊瀬皇子が、こうも変わるものなのね」
韓媛は、そんな大泊瀬皇子を見てしみじみそう思った。人の成長とは時には凄い奇跡を見るようなものだと。
「俺だって、今はそんな悪戯はしない」
だが彼が当時のまま成長していたら、今頃は本当にどうしようもなかっただろう。
「まぁ、大泊瀬皇子が立派にご成長されて何よりです。ところで皇子も離宮に行かれるのですよね?」
「あぁ、俺も久々に離宮の様子を見に行っておきたい。それで今回はお前達親子を誘う事にした」
今回大泊瀬皇子は離宮の視察で、韓媛親子は紅葉を見るのが目的だ。だが恐らく大泊瀬皇子も紅葉は一緒に見に行くのだろう。
「そうですよね。ではご一緒出来るのを楽しみにしております」
韓媛は嬉しそうにしながら、彼にそう言った。まさか今回の遠出に大泊瀬皇子が同行する事になるとは思ってもみなかったが、これはこれで楽しみである。
そしてその後、しばらくさりげない会話をした後、大泊瀬皇子は韓媛の元を後にして、自身の宮へと帰って言った。
大泊瀬皇子は葛城円にそう答えた。大和の皇族ですらたまにしか使っていない場所だ。そこに葛城の者を招いたからと言って、大和が特別困る事もない。
(韓媛が吉野に行った事がないのなら、あの辺りの景色を是非見せてやりたい)
大泊瀬皇子は、韓媛もこの話しを聞いたらさぞ喜ぶだろうと思った。彼女は子供の時、この時期から冬に移り変わる頃がとても好きだと言っていた。
「まぁ、大泊瀬皇子がそうおっしゃるなら、その提案に有り難く乗らせていただきます。韓媛もきっと喜ぶ事でしょうし」
こうして大泊瀬皇子は、葛城円の部屋を後にした。
そして帰る前に、韓媛に先程の話しも兼ねて、彼女の部屋に寄ってみる事にした。
韓媛は大泊瀬皇子からの提案を聞き、その場でとても驚いた。皇族の離宮など、今まで一度も行った事がない。
それに大和の皇族がわざわざ離宮を作る場所だ。さぞ今の時期は、紅葉も綺麗に見えるのだろう。
「まぁ皇子、それはとても素敵な提案ですね。私も是非その離宮に行ってみたいです」
大泊瀬皇子の予想どおり、韓媛は彼の提案を聞いてとても喜んでいるようだ。
「昔お前はこの季節が好きと言っていただろう。吉野の離宮はこの時期とても紅葉が綺麗だから、お前も喜ぶと思った」
「大泊瀬皇子、そのような昔の話しを良く覚えられてましたね」
それは昔2人が一緒に遊んでいた時に、韓媛が大泊瀬皇子に話した事だ。
(あれは皇子が落とし穴を作っていた時だわ。その上に落ち葉をたくさん積めば分からないと言って)
「確か大泊瀬皇子が、私が同族の男の子達に苛められていて、その仕返しにと皇子が落とし穴を作っていた時でしたね……」
「あぁ、葛城のガキ共を落とし穴に落とした時は、かなり痛快だったな」
大泊瀬皇子は少し意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
当時韓媛もそんな皇子を見て、さすがに呆れていた。その後男の子達は大人に助けられたが、大泊瀬皇子に関しては、大和の大人達にこっぴどく叱られる事となる。
(でもその後、不思議と私が男の子達から苛められなくなったよね。それにその男の子達とも今は全然会わなくなったわ……)
この件はその後、彼女の父親の葛城円にも伝わる事となった。
そのため、韓媛はもしかすると父親がその後上手く対応したのかもしれないと思った。
「そんな悪戯をしていた大泊瀬皇子が、こうも変わるものなのね」
韓媛は、そんな大泊瀬皇子を見てしみじみそう思った。人の成長とは時には凄い奇跡を見るようなものだと。
「俺だって、今はそんな悪戯はしない」
だが彼が当時のまま成長していたら、今頃は本当にどうしようもなかっただろう。
「まぁ、大泊瀬皇子が立派にご成長されて何よりです。ところで皇子も離宮に行かれるのですよね?」
「あぁ、俺も久々に離宮の様子を見に行っておきたい。それで今回はお前達親子を誘う事にした」
今回大泊瀬皇子は離宮の視察で、韓媛親子は紅葉を見るのが目的だ。だが恐らく大泊瀬皇子も紅葉は一緒に見に行くのだろう。
「そうですよね。ではご一緒出来るのを楽しみにしております」
韓媛は嬉しそうにしながら、彼にそう言った。まさか今回の遠出に大泊瀬皇子が同行する事になるとは思ってもみなかったが、これはこれで楽しみである。
そしてその後、しばらくさりげない会話をした後、大泊瀬皇子は韓媛の元を後にして、自身の宮へと帰って言った。