季節もすっかり秋になり、大和やその付近の地域では紅葉がとても綺麗に見られるようになった。
そんなある日の事である。
葛城円が自身の部屋に娘の韓媛を呼び、ある提案を持ちかける。
「最近は良くない出来事が続いていたから、気分転換も兼ねて少し遠出をしてみないか?」
「え、お父様、遠出ですか?」
韓媛は父親からの突然の提案に対し、思わず目を丸くする。
確かに最近、大王の崩御や皇族内での内乱等、物騒な事が色々と続いていた。
また少し前に話しに出ていた、大泊瀬皇子と草香幡梭姫の婚姻の件も、彼女の兄の大草香皇子が穴穂大王に暗殺されてしまい、今は一旦保留状態になっている。
(こんな時期にお父様が遠出に誘うのは、少し意外ね……)
「あぁ、今は紅葉が綺麗だから、前々からお前が行ってみたいと言っていた吉野に行くのはどうかと思ってな」
吉野は大和からさらに南に下った所にある場所で、この時期はとても紅葉が綺麗に見られる。
そして韓媛は、その吉野にはまだ一度も行った事がなかった。
また吉野は大和の皇族が度々行っている場所だ。なので、そこまで道のりが悪いわけでもなく、韓媛でも十分に行けると円は考えた。
「まあ、あの吉野にですか。お父様それは是非とも行ってみたいです!!」
韓媛は意外な父親からの提案を聞いて、とても心を踊らせた。
(吉野は一度行ってみたいと思ってたのよね)
韓媛は先日の大泊瀬皇子の婚姻の話しがあって以降、妙に気持ちが沈みがちだった。
そんな彼女からしてみれば、この遠出は良い気分転換になりそうだ。
「吉野なら朝早めに出かければ、その日の内に帰って来る事も出来る。だが折角だから、1日どこかに泊まってみても良いかもしれない」
円曰く、葛城もそれなりに大きな族であるので、吉野付近に住む者の住居に泊めてもらえるよう、手配をする事も可能なのだそうだ。
「泊まりがけでの遠出となると、本当に心が浮き立ちますね」
韓媛もとても嬉しそうにしながら、父親にそう答える。彼女の場合、日頃は中々遠出が出来ないので、願ってもない事だった。
父親の円も、そんな娘の嬉しそうな様子を見て、思わず目を細める。
円自身も妻が亡くなって以降、娘には寂しい思いをさせていないかと、常々心配していた。
そんな中での娘との久々の遠出である。父親としても、出来る限りの事を彼女にはしてやりたい。
(それと先日聞いた使用人達の話しで、韓媛が大泊瀬皇子の妃選びの話しを聞いてから、少し元気がないと聞く。もちろん皇子の事情は聞いているが、まぁ良い気分転換になるだろう)
「よし、では従者も数人連れて出かけるとしよう。こんな時にお前が馬に乗り慣れていて本当に良かった」
(娘に歩いて吉野まで行かせるのは、流石に大変なので、今回は馬に乗れる者だけで向かった方が良いだろう)
そんなある日の事である。
葛城円が自身の部屋に娘の韓媛を呼び、ある提案を持ちかける。
「最近は良くない出来事が続いていたから、気分転換も兼ねて少し遠出をしてみないか?」
「え、お父様、遠出ですか?」
韓媛は父親からの突然の提案に対し、思わず目を丸くする。
確かに最近、大王の崩御や皇族内での内乱等、物騒な事が色々と続いていた。
また少し前に話しに出ていた、大泊瀬皇子と草香幡梭姫の婚姻の件も、彼女の兄の大草香皇子が穴穂大王に暗殺されてしまい、今は一旦保留状態になっている。
(こんな時期にお父様が遠出に誘うのは、少し意外ね……)
「あぁ、今は紅葉が綺麗だから、前々からお前が行ってみたいと言っていた吉野に行くのはどうかと思ってな」
吉野は大和からさらに南に下った所にある場所で、この時期はとても紅葉が綺麗に見られる。
そして韓媛は、その吉野にはまだ一度も行った事がなかった。
また吉野は大和の皇族が度々行っている場所だ。なので、そこまで道のりが悪いわけでもなく、韓媛でも十分に行けると円は考えた。
「まあ、あの吉野にですか。お父様それは是非とも行ってみたいです!!」
韓媛は意外な父親からの提案を聞いて、とても心を踊らせた。
(吉野は一度行ってみたいと思ってたのよね)
韓媛は先日の大泊瀬皇子の婚姻の話しがあって以降、妙に気持ちが沈みがちだった。
そんな彼女からしてみれば、この遠出は良い気分転換になりそうだ。
「吉野なら朝早めに出かければ、その日の内に帰って来る事も出来る。だが折角だから、1日どこかに泊まってみても良いかもしれない」
円曰く、葛城もそれなりに大きな族であるので、吉野付近に住む者の住居に泊めてもらえるよう、手配をする事も可能なのだそうだ。
「泊まりがけでの遠出となると、本当に心が浮き立ちますね」
韓媛もとても嬉しそうにしながら、父親にそう答える。彼女の場合、日頃は中々遠出が出来ないので、願ってもない事だった。
父親の円も、そんな娘の嬉しそうな様子を見て、思わず目を細める。
円自身も妻が亡くなって以降、娘には寂しい思いをさせていないかと、常々心配していた。
そんな中での娘との久々の遠出である。父親としても、出来る限りの事を彼女にはしてやりたい。
(それと先日聞いた使用人達の話しで、韓媛が大泊瀬皇子の妃選びの話しを聞いてから、少し元気がないと聞く。もちろん皇子の事情は聞いているが、まぁ良い気分転換になるだろう)
「よし、では従者も数人連れて出かけるとしよう。こんな時にお前が馬に乗り慣れていて本当に良かった」
(娘に歩いて吉野まで行かせるのは、流石に大変なので、今回は馬に乗れる者だけで向かった方が良いだろう)