大泊瀬皇子(おおはつせのおうじ)も、自身の姉が宮から居なくなってしまったため、さすがに動揺を隠せないでいる。

(大泊瀬皇子も、自身のお姉さんが居なくなると、やはり心配するものなのね……)

そんな皇子を見て、韓媛(からひめ)も少し罪悪感を感じる。だが軽大娘皇女(かるのおおいらつめ)の事は流石に皇子には話せない。

だが宮の人達も、彼女が木梨軽皇子(きなしのかるのおうじ)の元に行ったのではと、薄々感づいているようだ。


そして翌日は、1日中軽大娘皇女の捜索が行なわれる事となった。だが結局彼女の事は見つけられずじまいとなった。

韓媛に関しては、さらにその翌日に大泊瀬皇子が葛城円(かつらぎのつぶら)の元に送り届けた。

葛城円も軽大娘皇女の話しを聞いて、同じ娘を持つ親として、ひどく同情していた。

(お父様も、相当な衝撃を受けられたみたいだわ……)

韓媛もそんな父親を見て、余り父親を心配させるような行動は、今後は出来るだけしないようにしようと決めた。



そしてその後に、いよいよ大和の新たな大王が即位する事が決まった。

それは大泊瀬皇子の兄である穴穂皇子(あなほのおうじ)である。

また穴穂皇子は、大王に即位すると同時に、新たな自身の宮として、石上穴穂宮(いそのかみのあなほのみや)を建てる事にした。

こうして新たに大王が決まった事により、当分の間、大和もとても慌ただしくなる事だろう。

韓媛も父親の円と一緒に、これからの大和がどうなっていくのか、色々と思いを巡らせる事となった。