「分かったわ布津与(ふつよ)。ではこの部屋に皇子を案内してもらえる?」

大泊瀬皇子(おおはつせのおうじ)韓媛(からひめ)の元にやってきた時は、彼女と皇子はいつもこの部屋で会うようにしている。

彼らの場合、既に半分通い婚のようになっていたので、大泊瀬皇子が来た日は、そのまま彼は韓媛の家に泊まり、翌日自身の宮へと帰っている。

「それが大泊瀬皇子がおっしゃるに、今日は外で韓媛様とお話ししたいとのことです」

それを聞いた韓媛は何とも奇妙だなと思った。自分に話しがあるなら、尚更部屋で話した方が良いだろうに。

(大泊瀬皇子、一体どうしたのかしら?)

「布津与、分かったわ。大泊瀬皇子は今外にいるのかしら?それなら私が皇子の元に行ってくるわ」

どうやら布津与の方もそのつもりで、韓媛の部屋にやってきているようだった。

「はい、大泊瀬皇子は外で韓媛様をお持ちになられてます」

それを聞いた韓媛はすぐさま立ち上がり、部屋を出てそのまま大泊瀬皇子の元に行くことにした。

(どうか、余り良くない話でなければ良いけれど……)

ここ最近は、本当に良くない出来事ばかりが起こっていた為、韓媛も少し不安になる。

だが大泊瀬皇子を外で待たせているため、彼女は急いで彼のいる場所へと向かった。