阿佐津姫はそのまま市辺皇子の元に駆け寄る。だがこれだけの傷を受けてしまっては、恐らく彼は助からない。
「市辺、あなたどうしてこんなことをするのよ。あなたは人を殺すなんて出来ない人でしょう!」
阿佐津姫はそういいながら、彼を自身の膝に乗せた。もう彼が助からないことを彼女も理解している。
韓媛は急いで大泊瀬皇子の元に駆け寄った。彼は肩に傷を受けてしまったが、命の別状はないだろう。
そして大泊瀬皇子は韓媛に支えられながら、市辺皇子に近寄った。
「おい、市辺皇子。どうして最後にあんな油断をするんだ。俺だって本当はこんなことしたくはなかったんだ!」
大泊瀬皇子の目からも少し涙が流れてきていた。
そんな時だった、どこからか馬の声が聞こえてきた。韓媛がその音のする方向を見る。どうやら忍坂姫達もやってきたようだ。
そして忍坂姫は馬から降りるなり、急いで彼女らの元にかけよる。そして市辺皇子の状態を見て、全てを悟ってしまったようだ。
それから阿佐津姫の横に座り、思わず市辺皇子の頭を撫でる。
市辺皇子ももうとっくに成人しているが、忍坂姫は彼からしてみれば母親替わりのような存在だった為か、特に抵抗することなく、大人しく撫でられていた。
「市辺皇子、あなたは昔から人思いでとても優しい子だったわ。私にも凄く懐いてくれて、本当に可愛い皇子だったの……」
そういって彼女も思わず涙を浮かべる。
そんな彼女を見て市辺皇子は、苦しいのを必死で我慢して話しだす。
「忍坂姫、あなたと雄朝津間大王には本当に感謝してます。幼くして両親を亡くした私にとって、お二人は本当に親のような存在でした。あなた達と一緒にいられて本当に幸せでした……」
市辺皇子はこんな状況でも笑みを見せてそう話した。
「市辺皇子、私もあなたのことは本当の息子のように思っていたわ。あなたと初めて会った時のこと、今でもしっかりと覚えてる……」
忍坂姫は涙を必死でこらえて、笑ってそういった。
市辺皇子はそんな忍坂姫を見終わると、今度は阿佐津姫に目を向けた。
阿佐津姫も彼を膝に乗せた状態のまま真っ直ぐ彼を見つめていた。
「阿佐津姫、俺は自身の生い立ちのこともあって、中々本音で話しをするのが苦手だった。それでお前にも中々素直になれなくて……
ただそれでも、俺にとってお前は1番大切な女性だった。例え別の姫を妻にし、子を成したとはいえ、それでもずっとその想いは変わらない」
これは阿佐津姫のみならず、他の者も意外に思えた。まさか市辺皇子の口からこんな話しが出るとは思いもしていなかった。
だが何故か大泊瀬皇子だけは薄々気付いていたようで「全く、そんなの俺はとうに気付いていた。お前の態度を見ていたら分かることだ」
(え、大泊瀬皇子は気付いていたの?でもそのことをずっと誰にもいわずにいたということかしら……)
韓媛はもしかすると、これは大泊瀬皇子の優しさだったのかもしれないと思った。
「市辺、あなたどうしてこんなことをするのよ。あなたは人を殺すなんて出来ない人でしょう!」
阿佐津姫はそういいながら、彼を自身の膝に乗せた。もう彼が助からないことを彼女も理解している。
韓媛は急いで大泊瀬皇子の元に駆け寄った。彼は肩に傷を受けてしまったが、命の別状はないだろう。
そして大泊瀬皇子は韓媛に支えられながら、市辺皇子に近寄った。
「おい、市辺皇子。どうして最後にあんな油断をするんだ。俺だって本当はこんなことしたくはなかったんだ!」
大泊瀬皇子の目からも少し涙が流れてきていた。
そんな時だった、どこからか馬の声が聞こえてきた。韓媛がその音のする方向を見る。どうやら忍坂姫達もやってきたようだ。
そして忍坂姫は馬から降りるなり、急いで彼女らの元にかけよる。そして市辺皇子の状態を見て、全てを悟ってしまったようだ。
それから阿佐津姫の横に座り、思わず市辺皇子の頭を撫でる。
市辺皇子ももうとっくに成人しているが、忍坂姫は彼からしてみれば母親替わりのような存在だった為か、特に抵抗することなく、大人しく撫でられていた。
「市辺皇子、あなたは昔から人思いでとても優しい子だったわ。私にも凄く懐いてくれて、本当に可愛い皇子だったの……」
そういって彼女も思わず涙を浮かべる。
そんな彼女を見て市辺皇子は、苦しいのを必死で我慢して話しだす。
「忍坂姫、あなたと雄朝津間大王には本当に感謝してます。幼くして両親を亡くした私にとって、お二人は本当に親のような存在でした。あなた達と一緒にいられて本当に幸せでした……」
市辺皇子はこんな状況でも笑みを見せてそう話した。
「市辺皇子、私もあなたのことは本当の息子のように思っていたわ。あなたと初めて会った時のこと、今でもしっかりと覚えてる……」
忍坂姫は涙を必死でこらえて、笑ってそういった。
市辺皇子はそんな忍坂姫を見終わると、今度は阿佐津姫に目を向けた。
阿佐津姫も彼を膝に乗せた状態のまま真っ直ぐ彼を見つめていた。
「阿佐津姫、俺は自身の生い立ちのこともあって、中々本音で話しをするのが苦手だった。それでお前にも中々素直になれなくて……
ただそれでも、俺にとってお前は1番大切な女性だった。例え別の姫を妻にし、子を成したとはいえ、それでもずっとその想いは変わらない」
これは阿佐津姫のみならず、他の者も意外に思えた。まさか市辺皇子の口からこんな話しが出るとは思いもしていなかった。
だが何故か大泊瀬皇子だけは薄々気付いていたようで「全く、そんなの俺はとうに気付いていた。お前の態度を見ていたら分かることだ」
(え、大泊瀬皇子は気付いていたの?でもそのことをずっと誰にもいわずにいたということかしら……)
韓媛はもしかすると、これは大泊瀬皇子の優しさだったのかもしれないと思った。