思い返せば思い返すほど、記憶の中の怜悧くんと重なる。
はっきり顔が見えたわけじゃない。
身長だって声だって小さい頃とは変わってるんだから、根拠もない。
でも、静かに周りを圧倒するあの雰囲気を持つ人は、怜悧くんしか知らない……。
『――怜悧くん、?』
『……誰それ』
本人が違うっていうなら、違う、のかな……。
でもKINGって聞いたときしっくりきたの。
怜悧くんは昔から輪の中心にいて、みんなの憧れで。
赤帝に臨君するKING。
その席が、すごく似合う男の子だと思うんだ。
「……ねえ。赤帝のKINGの名前って、なんていうの?」
そう尋ねたときだった。
「転校生ちゃーん! 職員室で担任が呼んでたよ! なんか、渡さなきゃいけない書類があるんだって~」教室の前の扉から声が飛んでくる。
……いけない!
そうだ、昼休みに転校後の手続きをする書類を取りにこいって言われてたんだった!
怜悧くんのことしか頭になくて、すっかり忘れてた。
ううう、やらかしてばっかりだあ……。