わっ、電話!?
そして次の瞬間、私を抱きしめていた腕の力が弱くなる。
怜悧くんがスマホを掴む。
画面の光でベッドの周辺が照らされて、そんなぼんやりとした明るさの中で視線がからんだ。
「っ、」
寝起きとは思えないほど、怜悧くんの黒い瞳がはっきりと私を捉えている。
指先が通話ボタンに触れるまでの数秒間は、永遠にも思えて
――息をするのも忘れそうだった。
「……はい」
電話に出た声は少し掠れていて、それが胸の奥を甘くくすぐる。
「そうですね。黒帝が最近やけに大人しいのも気になりますが、今回は恐らく無関係だろうと。……はい、情報が入り次第また連絡を入れます。ああ、それと別件で申し訳ないのですが――」
敬語で話してる……。
なんか知らない人みたいで、寂しいのと、ちょっと怖いのと。
邪魔したら申し訳ないとも思って、少しずつ距離をとる。
そろり、音を立てないようにベッドを降りようとすれば、手首を掴まれた。