ドンッと足を踏み鳴らしてビシッと敬礼するさまは、先輩団員たちの迫力には負けるが、かなり頼りになりそうだ。
「リーダーはガスパルが勤めます」
ガスパルは一般志願者のうちでも一番腕が立ち、頭脳も明晰な逸材だと言う。
どこかで見た記憶があると思ったら、稽古でアルフレッドに立ち向かっていったうちのひとりだ。
「よろしくお願いします」
「応! 我らが、前後左右をお囲みいたします! シルディーヌさまは、我らの輪からお出にならないようお願いいたします!」
かくてシルディーヌは王族なみの護衛をされて、寮まで戻ることになった。
無言の人たちを引き連れて歩くのは慣れていない。
そもそもそこまでの要人ではないのだ。事情を知らない人には奇異に映るだろう。
気恥ずかしいが、通勤の往復路は人とすれ違うことが少ないのは救いである。
けれどその分、諜報員に襲われても目撃されることも救われることもない。護りがつくのは正解なのだ。
それでもなんだか気まずくて、話しかけるのを試みたが「我らはシルディーヌさまとの会話を禁じられています」と、ガスパルに一蹴されてしまう。
寮に着いたときに出くわしたペペロネとキャンディにぽかんと見つめられ、夕食時に質問攻めにあったのは言うまでもなく、シルディーヌは答えに窮した。
「今は不審者が多いから、騎士団員が護衛のレッスンをしてるの」
なんとか、ごまかしたのだった。