新幹線から下りたら

誰も知ってる人がいなくて

不思議な気分だった



ここは

ばあちゃんに告げ口する人もいない



オレと朝日奈が付き合ってるのは

とっくに

ばあちゃんは知ってる



あの後

朝日奈が

オレの彼女になったことを

嬉しそうに

ばあちゃんに話してた



ばあちゃんも

朝日奈がオレの彼女になったことが

嬉しいわけだけど

ふたりきり禁止令は解除されなかった



あそこにいると

ふたりの時間は

ほぼなかった



家でも

外でも

人間監視カメラが付いてる



ばあちゃんの目を盗んで

朝日奈がキスしてくるか

朝日奈を送るついでに

誰もいない暗い道で

朝日奈を抱きしめた



「いっぱい人いるね」



朝日奈がオレの手を掴んだ



東京は

誰もオレたちのことなんて見てない



「朝日奈、迷子になると悪いから
離さないでね」



「うん!」



かわいいな…



こんなに人がいるのに

朝日奈だけが

特別に見える



「どこから行く?」



「んー…まずは
星野の家行きたい!」



「なんで?
たぶん、まだ誰もいないよ」



「うん
星野とふたりになりたい」



え…



予想してなかった言葉に

照れた



繋いだ手が熱くなった