「今日もエラは誰よりも美しいね」
「…っ、ノア様。恥ずかしいです」
「ふふ、恥ずかしがらないで、僕のエラ。ほらもっとエラの顔を見せて」
「…もう、ノア様、からかっていますね」
「何のことかな?」


甘い雰囲気で美しい庭園を美しいノアと歩き続ける。
私はノアに誘われていつものようにノアと共に庭園を散歩していた。

最初こそはノアのことなんて何とも思っていなかったし、常に望まれるように接してきた。
だが少しずつノアを知っていくうちにノアのことが好きになり私は人生で初めて恋に落ちてしまったのだ。

だからノアに愛を告白された時は仕事先だというのに迷わずノアの恋人になることを選んでしまった。
必ず別れが訪れる悲しい偽りの恋人に。


「君の国では宝石が特産物だったね。この美しい真珠のブローチも君の国のものだね。誰からの贈り物かな?」
「ええ。よくわかりましたね。ですがこれは誰かからの贈り物ではありませんわ」


何故そんなことを聞くのだろうかと疑問に思いながらも表情は一切崩さない。
自分の国の真珠であることは間違いないではないが、これは贈り物ではない。正しくはこの仕事の為にボスが用意した衣装の一つだ。


「それはよかった。僕以外の誰かからのものをこれからも身につけたらダメだよ?」


ふわりとノアが笑う。
恋人になって初めて知ったことだが、ノアにはよく意味のわからない独占欲というか、嫉妬心がある。
正直恋人になってもうすぐ2ヶ月になるが未だに何がノアの気に触ることなのかわからない部分も時々ある。

それでも私はノアを愛していたし、ノアに夢中だった。
この一時が永遠であればいいと何度も願った。