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「エラ、足元に気をつけて」
「はい、ノア様」
美しいこの国の王子様、ノアに手を引かれて、学院内の園庭を歩く。
園庭には所々川が流れており、その周りには草花や木が生い茂っている。ここは本当に学院内なのだろうかといつ見ても思ってしまうほどの雄大な自然がここには広がっていた。
仕事の為に身分を偽って隣国へ来てもうすぐ半年。
今の私は自分の国のとある貴族であり、ここへは期間を決めずに留学へ来ている。
…のがまあ、仕事の為の表の事情で、本当は私の留学を機に、共に隣国へやって来た私の両親役がこの国の貴族や王族からいろいろな情報を探ることが目的だった。
自然な流れで欲しい情報を得る為に、こちらも貴族になっているのだ。
今回の私の仕事はほぼないと言ってもよかった。
同年代の子ども相手では特に知りたい情報も得られないからだ。
ただ大人しく、貴族らしく振る舞っておけばいいだけの仕事。つまらないが私が生きる裏社会は常に人が死ぬ世界でもある。これだけで報酬が貰えるのならこんなにもいい話はない。