悪魔の電話

私達は、絵に書いたような幸せな家族だった。
でも、1本の電話から少しずつ変わっていった。

母親からの電話だ。

学院を継いで欲しい。
父親に謝って戻ってきて欲しいとの事だ。
勿論、主人は断った。

でも、毎日毎日同じ内容で電話をかけてくる母親。
そのうち主人は電話に出ることが無くなった。
母親からの電話はディスプレイで分かる。
電話がかかってくると、私が取り嘘をついて、今主人は寝てます。出かけています。
そんな嘘で主人は2度と電話に出る事が無くなった。

飛び火が来たのは、言うまでもない。
学院を継いで欲しい。父親に謝って欲しい。ひろちゃんからも伝えて欲しい。
そんな内容が、毎日から1日に数回に変わった。
それが何ヶ月、何年に渡って繰り返された。

私はその頃からおかしくなったのかも知れない。

私達はその頃はまだ、1番下の子ができる前だったけど、妊娠が発覚してから、引越しをしようと決めていた。
何故なら3人の子供を育てるには、その家では狭すぎるからだ。


そんな時母親から、家を買ってあげるから、父親に謝って戻ってきて欲しいと交換条件を出された。

悩んだ。
とても悩んだ。

父親とは、全く連絡は取っていなく、母親も内緒でかけてきてる様子だった。

絶対に悪いようにはしないから、戻ってきて欲しいと。

その頃には主人は、ビデオ店の店長にまで上り詰めていた。

父親と和解して、戻るべきなのか。
今のまま細々く、でも幸せな生活を送るのか。


もしかしたら、父親も戻ってきて欲しいと思ってるかも?
もう、主人の事は許してるのかも?

家を買うのは父親だと知ったからだ。

私達は、父親に会うことにした。
ちょうど、上の子の卒園式の日だった。

今まですみませんでした。
心にも思っていないことを、2人して謝った。


これから地獄が待ってるとも知らずに…