御陵のネットワークを侮られると困るのだが、情報は常に手中にある。

つまり彼女の細かな個人情報や彼女の姉が胡粋の元彼女であることぐらいは、ちょっと調べれば簡単にわかるのだ。



彼らはこの時間昼食だったわね、と。

五家の予定を思い出しながら本邸の部屋へと通す道中で、「どうしてわざわざ会いに?」と彼女に尋ねた。



鯊家の拠点は愛知県だ。

新幹線で来たみたいだからそう時間はかからなかっただろうけど、話をする程度なら電話でもできる。



「パパは、こーちゃんと付き合うのは絶対だめだって……

でもこーちゃん、隠れてお姉ちゃんと付き合ってたから。こーちゃんに聞いたら、別に誰が彼女でもよかったって言うんです」



「ええ、」



「でも、誰でもいいのに菓はだめって……」



たしかこの子は、いま愛知県内にある私立の中高一貫校に通っていたはず。

確か、まだ中学1年生。申し訳ないけれど、胡粋がついこの間まで小学生だった女の子と付き合うとは到底思えない。




けれどまあ、どうやら胡粋に着信拒否されたが故にここまで会いに来たみたいだし。

解決してくれればいいけど、と胡粋と対面させたのに、胡粋の毒づき方といったら遠慮なし。



落ち着いてから別室に連れて行ったけど、完全に彼女は落ち込んでしまったみたいだった。

……にしても、冷たく突き放す割には、優しかった。



「菓ちゃん。

"襲われた"って、どういうこと?」



まさか胡粋が当時小学生だった彼女に手を出したなら、それはそれで色々困る。

優しく尋ねたら菓ちゃんは視線だけを持ち上げて、例の「襲われた」発言について詳しく説明してくれた。



「何回も好き好き言ってたら、こーちゃんに『しつこいと襲うよ』って怒られたことがあって……

ベッドに追いやられて、その……」



「……うん」



「首を噛まれました」