芙夏の指が、しっとり指に絡んでくる。
遊んでいる雪深はさておき、顔の良い彼らなら、どう考えても寄り付く女の子たちを相手にした方が早い。なのに、どうして、わたしに拘るのか。
どれだけ願ったって。
わたしに、触れることもできないのに。
「芙夏……キス、好きね」
「子孫繁栄のために、その先を求めようとするけど。
キスの方が、ほんとに大事に思える相手としたいって、思わない……?」
「……ほんとかしこい子」
少なくとも五家のうち、柊季以外とはちゃっかりキスを済ませてるわたしが言えたことじゃないけど。
言われてみれば、憩とのキスは特別だった。
その先は、高校生になってからは、いつも当たり前みたいに求められていたのに。
キスは、彼が時々くれるご褒美のようなものだったから。数えられるほどしかくれなかった触れるだけのキスをされる度に、ドキドキしたのを覚えてる。
「ぼく今、レイちゃんにレイちゃんのこと大事だって言ったつもりなんだけど……」
「わたしも芙夏のこと大事に思ってるわよ」
「……そういう意味で言った訳じゃないもん」
ボソッとなにか言った芙夏が、今この瞬間までの時間が何も無かったみたいに、「おやすみなさい」と布団に潜り込む。
切り替えの早さについていけず、ひとり取り残されたわたし。
「……、おやすみなさい」
ようやくそう返して隣に背を向けて寝転んだら、後ろから抱きつかれた。
やけに今日は甘えてくる芙夏の体温を背中に感じながら、目を閉じる。夏の夜だから暑いのはわかっているのに、ふたりでくっついたまま朝を迎えて。
おはようと笑った芙夏の表情が、やけに大人びて見えた。