「……ドタキャンって超印象悪いんですけど」
「そうだな。でも俺はそうしてくれた方が嬉しい」
「超無責任だわ~」
「なぎには俺がいるから問題ないよ」
「んー、わかったわかった」
私はその場で結婚相談所へ連絡を入れた。案外あっさりと事務的にキャンセル処置されて拍子抜けしたけれど、気持ち的にはすごく申し訳なくモヤモヤっとする。
けれど、ふと思う。
もしかしたら私が結婚破棄されたとき、彼もこんな気持ちだったのかもしれない。
人を好きになる気持ちって本当に盲目で愛おしい。たくさん気持ちが浮き沈みして、時には気持ちを天秤に掛けたりして。
そうやって培って得た“好き”という感情は何物にもかえがたい大切な気持ち。だからこそ人は悩み落ち込み、そして喜ぶのだ。
今の私は潤くんに会えた喜びとまだ好きだと言ってくれるその気持ち、それだけで充分満たされた気がした。
あの時の彼もこうやって悩んだのかもしれない。本当に好きな人とちゃんと幸せになっていたらいいなと思う。
心に根差していたどす黒い気持ちが少しだけ薄くなった気がした。