「……なんで私なの?潤くんは格好いいし若いし家柄もいいんだから、恋人なんて引く手あまたじゃない」

「俺は小学一年生の頃からなぎ一筋だ。ずっとなぎが好きなんだ」

手首は捕まれたまま、逃げることは許されない。真剣な表情で訴えられどうしたらいいかわからなくなった。

「なぎに恋人ができるたびに悔しくてたまらなかった。早く大人になってなぎに追いつきたかった。でもなぎが恋人と別れたタイミングで会うことができたし、俺も大人になった。だったらなぎをもう逃すはずないだろ?」

「……どこから来るのよ、その自信は」

「自信なんてないよ。あるとしたらなぎを好きな気持ちだけ。いつも明るくて優しくて自信に満ち溢れているなぎだけど、本当は寂しがやで強がってなんでもないように振る舞ったりすることも知ってる。そんななぎを俺が守っていきたい。今日だってこんな綺麗な姿、誰に見せるつもり?俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎさ」

しゅんと項垂れていたかと思えば急に凛々しくなる。コロコロと変わる潤くんの姿にもてあそばれているようだ。

「……そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」

「後悔なんて学生のとき散々した。だから後悔しないようになぎにしつこく告白してる」

「あははっ、なにそれ」

笑い飛ばしてみたけど心はちっとも笑えない。だって潤くんの方がよっぽど大人じゃんか。グダグタと考えて文句ばかり言っている私とは大違いだ。ぐっと胸が詰まる感覚に私は目を伏せた。

ここまで想われて、嬉しくない訳がない。
そうでしょう?