「レンくんみたいなイケメンに会いたいなぁ。ね、レンくん」

「まんまぁ」

「そっかー、レンくんは花より団子かぁ」

私がお土産に持ってきたパンの袋をガサガサと漁るレンくんは一歳児なだけあって本能に忠実だ。何の駆け引きもない、今この瞬間を一生懸命に生きているレンくんが羨ましく感じる。

いつから私は損得を考えたり我慢したりをするようになったのだろう。大人なんだから当たり前のことかもしれないけれど、たまにはそんなことを忘れて思うままに生きてみたい。もっと素直に、欲しいものは欲しいと大きい声で言いたい。

「お前、お見合いってマジかよ?」

休日出勤から帰ってきた兄が珍しいものでも見るかのように私を見た。

「ボロが出ないか心配だな」

「どういう意味よ!」

「樹くんは可愛いなぎさちゃんのことが心配なのよ。いいなぁ、兄妹って」

兄との小競り合いに姫乃さんは一人ほんわかとする。その雰囲気は兄とのケンカをすぐに終わらせるくらいに柔らかい。本当に羨ましい。私も姫乃さんみたいにほんわかした雰囲気を出さないとお見合いも上手くいかないかもなとぼんやり思った。