顔を赤くして固まるあたしに、月原先生は察してくれたらしい。

 フッと少しおかしそうに「大丈夫」と言って笑った。


「私はもう行くし、ここにはしばらく誰も近付かない様にしておくから」

 そう言ってあたしの頭をポンと軽く叩くと、次に陽呂くんの耳元に顔を寄せ何かを囁いていた。

「……え?」

 陽呂くんは軽く驚いたように声を上げたけど、それだけ。

 何を言われたんだろうと思っていると、月原先生は立ち上がって「じゃあ頼むよ」と言い残し小ホールから去って行った。


 その後ろ姿が見えなくなってハッとする。

「陽呂くん。少しは動ける?」

 本当に吸血するとしても、今どれくらい動けるのか……。

 手が使えるだけじゃあ起き上がることもままならないと思う。


「……どうだろ、腕は少し動くかな?」

 そう言って上半身を危なげに起こすけれど、途中でカクッとなってまた倒れそうになる。

「危ない!」

 とっさに受け止めるけれど、一緒になって倒れ込んでしまった。


「ごめん美夜……」

「ううん、大丈夫」

「……悪いけど、このまま咬みついてもいいか?」


 一緒になって倒れたことで、丁度あたしの首筋の辺りに陽呂くんの顔がある。

 あたしは陽呂くんを起こすことは出来そうにないなと思って「いいよ」と答えた。