「……ってことは、俺を吸血鬼にしたのは自分の“唯一”を見つけるためですか……?」

 沈黙が流れる中、陽呂くんが淡々と話した。


「君だけじゃないけどね。ほとんどありえないと分かっていながら、死にかけた人間を見つけては意思確認をして吸血鬼にした」

 視線が陽呂くんからまたあたしに向けられる。

「もしかしたらこの人は“唯一”を見つけられるかもしれない。もしかしたら、その“唯一”は私の“唯一”にもなれるかも知れない。……そう考えながらね」

 そう話す月原先生は眩しいものを見るかのようにあたしを見る。


「良いなぁ……羨ましいよ。……私の“唯一”は、どこにいるんだろうね……」

 今にも泣きそうな顔で月原先生は語る。


 吸血鬼はいつでも、無意識に“唯一”を求める。

 ただし、そのほとんどが見つけることが出来ない。

 だから、多くの吸血鬼は初めから諦めて過ごしているんだそうだ。


 でも、月原先生は違った。

 自分にとってのただ一人。その“唯一”という存在を知った日からずっと焦がれていた、と……。

 諦めると言うことすら考えられず、ひたすら可能性を模索しているのだとか。


「まあ、でもその私のわがままのせいで二人を巻き込んでしまった。……すまなかった」