「ごめんね、ベラベラと長話して」

「…いや逆にありがと、辛かった、なんてもんじゃない。
けど、椎名は偉いよよく頑張ったよ」

「あはは、頑張った、のかな?」


桜庭くんに不意に腕を掴まれ、そのままオレンジの香りに包まれた。


「…おれを利用していいよ、それで少しでも椎名さんが楽になるなら」

「…っ、え?そんな…」

「椎名はもう、幸せになっていいんだよ」

「……うぅ…」


どうして?どうしてそんなふうに優しくしてくれるの?
わたしは、幸せになってもいいの?


「桜庭くん、ありがとう……」

「ん、いつでも頼って」

「うん…」


その日は目が腫れるくらい、泣きじゃくった。
桜庭くんの優しさが心に染みた。