遥の話を聞いていくうちに僅かにあった希望も、期待も消え失せていく。
「彼女のこと、本気で好きなんだね。」
「変だって思う?」
「変?何が。」
「私が好きなのが、女子ってこと。」
「思わないよ。だって私、男子も女子も恋愛対象なの。遥は、私のこと変だって思う?」
そう言って戯けたように笑う。たとえ私の心が逃げたいと叫んでいても、それすらもねじ込んで。
「ううん。思うわけない。」
彼女は弱々しい声でそれでいてしっかりとそう口にした。
「でしょ?」
「私、ずっと誰にも言えなかった。女子を好きになったこと。変だって言われるのが怖くて。でも昨日のテレビで私の好きなタレントさんが、言ってたの。怖くて逃げてちゃ何も、始まらないって、その後に自分が同性愛者だってこと発表してた。その姿を見た時さ、私も逃げちゃダメだって思った。向き合う勇気をもらったんだ。」
遥は話し終えたあと、何かが吹っ切れたような顔をした。
「向き合う勇気か。」
ぽつりと呟く。私は、自分に問いかける。
彼女のように向き合う勇気が今、私の中にあるだろうかと。
「そう、だから私今日告白しようと思って。」
清々しいほどに綺麗な笑顔で遥はそう言った。