母に対する恨みは恐らく一生消えないと思う。今でも考えるだけで泣きたい気分になる。母が苦労したのは本当に自分のせいだと思った時期もあった。その罪悪感で、なるべく母の意思に逆らわないように、なるべくいい子になろうと思いながらずっと生きてきたけど…もう今なら分かる。それは自分のせいじゃない。


「母はいつだって私を言い訳にしたよ。父と別れる前はいつも『お前さえいなかったらいつだって私は自由になれたのに』、『あなたのせいで今まで我慢したのに』とかをずっと言い続けて、別れたあとは『あなたの為に私は自分の人生犠牲にしているから』と言って…ずっと私を責めた。まるで別れた原因を私が提供したかのように…。私もずっとそう言われたから、本当に自分のせいだと思った時期もあったよ。でも、それは違う。私が母を恨んでいるのは、離婚したその事実ではなく…必要以上に私に自分の人生の重みを一緒に背負うように強調して、自分が叶えられなかった『夢の人生』を代わりに送るよう圧力をかけたことだよ」

理央はただ黙って彩響の話を聞いていた。彩響がさらに力を入れ、親友の手を握った。もしかしたら、理央も自分の母のようになってしまうのではないかと心配した時期もあった。でも、きっと大丈夫。彩響自身が経験したように、理央も掃除をして、本当に自分が欲しいものがなんなのか、分かるようになるから。

「旦那さんとよりを戻したいと思うのなら、そうして。今からでも会いに行って、やり直したいって、頭を下げてお願いして。もし別れたいのなら、そうして。でも、どの選択肢でも、選ぶのはあなた自身よ。「娘のために家庭を守りたかった」とか、「娘のために離婚する」とか、そういうのは結局亜沙美を私と同じ苦しみに追い込むことになるから。自分で考えて、選んで、誰のためでもなく、あなたが本当に望む人生を歩みなさい」


理央は何も言わず、じっと家中を見回す。この綺麗な空間があまりにも新鮮すぎて、まだ慣れない様子だった。しばらく時間が経ったあと、やっと理央が口を開けた。


「私…うまくやっていけるのかな、この冷たい世界で、生き残られるのかな」


声が震えるのを感じる。その声から、どれだけ悩みが深かったのか、よく伝わってくる。彩響は涙を見せる代わりに、あえて微笑んだ。