(掃除しながら成長していく30歳OLの話なんて、絶対言えない)


そう、今自分が書いている話は、まさに自分の話だった。特に希望もなく、ただ仕事と家を行ったりきたりしていたOLが、ある日部屋の掃除をして、徐々に人生が変わっていく話。連載サイトでまだ読む人は少ないけど、コメントに「なんだか掃除したくなった」との話があったりして、どんどん書くのが楽しくなってきた。仕事で忙しいからじっくり書ける時間は少ないけど、最近は仕事から帰ってきて30分でも書くようにしている。毎日の積み重ねが大事、だと思いながら。


「じゃあ、今日はせっかく早く帰ってきたし、執筆活動してから寝る?」

「そうだね、3000字くらい目標にしてみようかな」

「うん、じゃあ美味しいもの作るよ。なに食べたい?オムライスとかどう?」

「いいね。美味しそう」


仕事は辛いけど、家に帰ってきて、好きなことやって。そしていい人と一緒に過ごせるこの日々が、すごく楽しい。

そうーいつまでこんな時間が続くんだろうか、ふと不安になってしまうくらい。


「…頑張れよ、彩響。本でたら、俺にサインしてくれよ」

「…もちろん!」


素直に認めよう、この笑顔がとても好きだ。太陽のようで、とても暖かい。見る人がとても安心できる、そんな素敵な笑顔だ。


(…違う、好きなのはあくまで笑顔だけ。それだけ!)

「…どうした?」

「ううん、なんでもない。オムライス、楽しみにしてるよ」


返事を誤魔化して、彩響は家への道を急いだ。