理央と別れ、複雑な気分で家に戻ってくると、玄関で見たことのない靴をいくつか発見した。形とサイズから見ると、これは男、おそらく…3人?推理しながらリビングに入ると、ソファーに座っていた人たちが一斉にこっちを見て挨拶した。


「あ、峯野さん、こんにちは。お邪魔しています」

「やっほー。彩響ちゃん、久しぶり。元気?」

「あ、今瀬さん、雛田くん。こんにちは。三和さんも久しぶりです」

「峯野様…いきなり訪ねて申し訳ございません…」

「あ、大丈夫です。気にしないでください」


そこにいたのは以前会ったことのある家政夫さんたちだった。彩響の声を聞いた成が、手にはお茶をのせたお盆を持ったまま、リビングから出てきた。


「あ、彩響、お帰り。意外に早かったじゃん。今日はずっとあの人…」

「理央、ね」

「そう、その理央さんという友だちと遊ぶんじゃなかった?」

「えーと…。仕事を思い出して」

「なんだよ、せっかく気晴らしになると思ってたのに…。まあ、取り敢えず座れよ」


リビングに座ると、早速雛田くんが近くへ寄ってきた。興味津々な顔で、彩響にいろいろと質問してくる。大体の内容はこの家のヤンキー家政夫さんのことだった。


「ねえねえ、彩響ちゃん、成はちゃんとやってる?」

「え?ええ、まあ…」

「なに言ってるんだ、ちゃんとやってるに決まってるじゃん」

「本人が言うのは信用できませーん。で、実際どうなの?」

「あ、大変お世話になっています。ほら、皆さんご覧の通りこんなに綺麗だし」


彩響の話にみんな家の中を見回す。現状この家はどこもピカピカで、おそらく彼らもここに入った時点から、成はいい仕事をしていると思ったはずだ。彩響の話に今瀬さんが嬉しそうな顔で喋りだした。


「それは良かったです!クライアントから直接いい話が聞けて安心しました」

「まったく、お前らそれでも俺の同僚か?もうちょっと俺を信用しろよ」

「彩響ちゃん、成は頭まで筋肉でできているから、男の人と一緒にいるから心配?とか考えなくていいよ」

「あ、ははは…」

「そこまでにしてくれ、林渡。峯野様が困っている」

(仲がいいのか、悪いのか…相変わらず変わった人たちだな…)


他愛のない話を聞きながら、彩響は彼らが入社同期で、よく4人でつるんでいたことを知った。4人ともそれなりに指名度の高い人材だったらしく、彩響はどこかで見たホストクラブのチラシを思い出した。


(いや、確かに顔はみなイケメンでは…あるけど…。いや、顔がいいのと仕事が上手なのは関係ないことで…)

「あの、そろそろ私仕事に戻りますので…」

「あ、ごめん、引き止めちゃって。なんか食べる?」

「大丈夫。みんなゆっくりしていってください。…では」