「うん?いや、よく食べてくれるのが嬉しくて」
本当、自分の感情に素直な奴だなーと思いながら、彩響は食べ続けた。彩響のお皿が空になる頃、再び成が質問する。
「今日も仕事大変だった?」
「仕事?まあ、いつものことだけど…でも今日はちょっと違ったかも」
「お、てことは…『掃除の力』を早速実感したのかな?」
(「掃除の力」?)
全く聞いたことのない言葉だけど、確かに、彼の言う通りかもしれない。彩響は肯定の意味で首を縦に振った。
「そうかも。今日部下が大きいミスをしたけど、意外に落ち着いて話を聞くことができたんだよね…。普段だったらブチ切れて気が済むまで叫んでたのに」
「そんなすぐキレる人だったの?」
「私が責任を持っている以上、自然に厳しい性格になるんだよ」
「まあ、それはいいことだ。でも俺が今言ってるのは、小説執筆のこと。さっきなんか夢中になってノートに書いていたじゃん」
彼が言っているのはTreasure Noteのことだ。見られていたのが少し恥ずかしくなったが、彩響は素直に電車での出来事を話した。
「電車でふと思い出して、いい話のネタになりそうだったから…忘れる前に書こうと思っただけ」
「そういうことの重なりが結局作品に繋がるんじゃないの?やっぱり、掃除の力が効いているんだよ」
「大げさです。そんな簡単に小説とか書ける訳ないでしょう」
「『掃除』はさ、単純に汚いものを綺麗にするだけの行為に見えるけど、実はそれだけじゃない。なにかを綺麗にすることで自分の心も磨くことになるし、あんたのように、忘れていた大事ななにかを思い出させたりもする。結局掃除することで、自分の人生になにが一番大事なのか分かるようになるんだ」
(自分の人生で、一番大事なこと…)
「そんなもん、お金に決まっているー!」とはっきり言える。今でもそれは変わらない。でも、少しずつ思い始めている。『お金は大事だけど、大事なものはお金だけではない』、と。
(…だからとは言え、今すぐ何かを書き出せる訳がない。そんないきなり人生Easy modeになるくらいなら、私もこんな苦労してないっつーの)
成の話は何もかもが希望的で、楽観的だ。彼の話を聞いていると、本当になにもかもがうまくいくような気がする。ふとこんなにポジティブな彼は、掃除で何を得たのか、知りたくなった。
本当、自分の感情に素直な奴だなーと思いながら、彩響は食べ続けた。彩響のお皿が空になる頃、再び成が質問する。
「今日も仕事大変だった?」
「仕事?まあ、いつものことだけど…でも今日はちょっと違ったかも」
「お、てことは…『掃除の力』を早速実感したのかな?」
(「掃除の力」?)
全く聞いたことのない言葉だけど、確かに、彼の言う通りかもしれない。彩響は肯定の意味で首を縦に振った。
「そうかも。今日部下が大きいミスをしたけど、意外に落ち着いて話を聞くことができたんだよね…。普段だったらブチ切れて気が済むまで叫んでたのに」
「そんなすぐキレる人だったの?」
「私が責任を持っている以上、自然に厳しい性格になるんだよ」
「まあ、それはいいことだ。でも俺が今言ってるのは、小説執筆のこと。さっきなんか夢中になってノートに書いていたじゃん」
彼が言っているのはTreasure Noteのことだ。見られていたのが少し恥ずかしくなったが、彩響は素直に電車での出来事を話した。
「電車でふと思い出して、いい話のネタになりそうだったから…忘れる前に書こうと思っただけ」
「そういうことの重なりが結局作品に繋がるんじゃないの?やっぱり、掃除の力が効いているんだよ」
「大げさです。そんな簡単に小説とか書ける訳ないでしょう」
「『掃除』はさ、単純に汚いものを綺麗にするだけの行為に見えるけど、実はそれだけじゃない。なにかを綺麗にすることで自分の心も磨くことになるし、あんたのように、忘れていた大事ななにかを思い出させたりもする。結局掃除することで、自分の人生になにが一番大事なのか分かるようになるんだ」
(自分の人生で、一番大事なこと…)
「そんなもん、お金に決まっているー!」とはっきり言える。今でもそれは変わらない。でも、少しずつ思い始めている。『お金は大事だけど、大事なものはお金だけではない』、と。
(…だからとは言え、今すぐ何かを書き出せる訳がない。そんないきなり人生Easy modeになるくらいなら、私もこんな苦労してないっつーの)
成の話は何もかもが希望的で、楽観的だ。彼の話を聞いていると、本当になにもかもがうまくいくような気がする。ふとこんなにポジティブな彼は、掃除で何を得たのか、知りたくなった。