先生の口からは信じられないような言葉が次々に出てきた。
「彼女は病気だったんだ…脳の病気でね。とても治せる病気じゃなかった。……だから彼女が死ぬ前に君の……臓器提供者として名乗りをあげたんだ」
頭が混乱している。芽依が死んだ?あんなに元気だった芽依が病気?臓器の移植?
「嘘…ですよね…」
僕はつぶやくようにそう言った。でも、芽依との記憶が蘇る。あの旅行中の薬の量、ほんとに喘息だったのか?彼女は僕に将来は医者になれると言った。あれは僕に心臓を提供して僕が生きられるから?
なんだよ……それ。
全て辻褄が合ってしまう。でも、信じたくはなかった。
僕が先生からの返事を待っていると、
「嘘じゃないの……それは芽依が…君のために書いたものだから……どうしても読んで欲しい」
芽依の母親が泣きながら掠れ声で僕にそう言う。
彼女が僕に書いたというノートを急いで読む。気を利かせてくれた先生は部屋を後にした。部屋には僕と芽依の母親だけがいる。僕はそんなことを気にしてる暇がないくらいにノートに書かれた文字に目を通していく。まずは日記のようなものが書いてあった。