「真衣が結婚したのよ。職場に来てた配管工事の人とだって。」

ああ、そんなことか。

心の中で呟いて、世界はまたモノクロになった。

理絵ちゃんは、たくさんしゃべっていた。
妊娠がどうのとか、結婚式がどうのとか

私はただ、吐息で曇る眼鏡ごしの、モノクロの世界を見ていた。


理絵ちゃんは、作りすぎたというおかずを沢山くれて帰っていった。

いつも作りすぎてくれてありがとう。こんな私を、見捨てないでくれてありがとう。
友達を大事にしない私を、大事にしてくれてありがとう。

自転車をギコギコ漕ぐたびに、ハンドルにかけた、おかずの入った袋がゆれる。


理絵ちゃんの最後の言葉が、耳にこびりついて離れない。


「いつまで、あんな男と続けるの」


あんな男の家が見える