「お疲れ。」

自転車の前に、一人の女が立ちはだかる。

以前のバイト仲間の理絵ちゃんだ。

「あー。ひさしぶ…」

「久しぶりじゃないでしょこのバカ!何日電話もメールも無視してるの?いつもの、“電源切ってた”じゃ済まされないわよこの貧乏バカ女!」

言い訳もできない早さで理絵ちゃんはまくしたてた。

そういえば、ここ一週間、携帯電話というものをチェックしてなかった。

あわててカバンを探ってみたが、中に入ってすらなかった。

理絵ちゃんの顔は相当怒っている。

理絵ちゃんは可愛い。いつもきちんと身なりを整えていて、しっかりしていて、お洒落なカフェかなんかでお洒落に働いている。

昔私も一瞬だけそこで働いていて、その時に仲良くなった。

「あのねぇ、緊急の連絡ってのが誰にだってあるのよ。ケータイくらいちゃんと持ちなさい。」

「はい…で、なんでしょう…」

理絵ちゃんは深いため息をついた