三年くらい前、押し入れの中に入っているトマトの段ボールに、おばあちゃんの日記が入っていることに太一が気付いた。


今、読むことが正しいかわからないけど、箱をあけてしまった。

昭和という文字が読み取れるノートや、日めくりカレンダーの裏に書かれたメモのような日記

とにかく沢山。

『太一が髪を切った。とってもお似合い』

『太一のゆりちゃんはきれいな子です』

「おばあちゃん名前間違ってる」

可愛らしい文章に思わず笑みがこぼれる。
『れんこん』とか『さすけちゃん』とか、最後の方はちらしの裏にただ書きなぐったようなものになっていて、胸がツンと苦しくなった。


「ねえ太一、太一がここに来てからの日記、おばあちゃん太一のことしか書いてないね」

太一は突っ伏していた。
太一の肩を抱いて、二人でしゃくりあげて泣いた。

「ばあちゃんの人生、横取りしちゃった」

太一は震えていて、私は何も言わずにただ泣いた。

おばあちゃんの人生を、太一はしっかり生きた。
できそこないの孫は、ここにいるよ。