あわてて詰めてきた一泊分の荷物は、足りないものが多すぎて
小さな安いホテルしかとれなかった自分を悔やんだ。

香典返しを開けてみたり、テレビをつけたりして、部屋にこもって夜をすごした。
太一から連絡はなかった。無理もない。

眠りに就く前に、やっぱり涙が出た。
おばあちゃんを思って、おばあちゃんを失った太一を思って。

おばあちゃんの作ってくれた、味のおもしろいご馳走の味、どんなんだったろう。
ギシギシとうるさいベッドの上で、鼻水をすすって、泣きながら眠った。


早朝、電話の音で目が覚めて、はれあがった顔をかかえてホテルを出た。

太一が待ってる。