町の風景は当たり前のようにちっともかわっておらず、人々の袖が伸びたくらいしか変化はない。

こんなに早く、この町に戻ってくるとは思わなかった。

おばあちゃんのくれた5000円、こんなかたちで返すことになるなんて思わなかった。

一泊分の荷物を持って、姉に借りたサイズの合わない喪服に身を包み
花に囲まれたおばあちゃんの写真を目の前にして、そんなことを考えていた。

祭壇に飾られたおばあちゃんの写真は、10年以上前のものなのか、髪型も、顔のしわも、私の知ってるお婆ちゃんじゃなかった。

写真家になりたいなんて適当に言うくらいなら、一枚くらい写真撮ってあげたらよかった。

お坊さんがお経を読んでも、周りの啜り泣く声を聞いてもピンと来ない。

ずっと下を向いたまま震えながら泣く太一を見て、私は初めて涙を流した。

太一のおばあちゃんは死んだんだ。