あのまま、電源をつけなければ良かった。

着信音を待ちわびるのが怖くて電源を切ったけれど、つけたところで何もきやしない。
一日待っても、二日待っても、一週間待っても

太一は距離をこえてくれなかった。

期待をかけるなんて図々しいことしなければ良かった。
泣くなんて惨めなこと、絶対にしたくない。

太一の馬鹿。私が馬鹿。
10月なのになんでこんなに寒いんだ。10月が一番馬鹿。

今日は家事を全部したから私は偉いんだ。働いてないけど偉いんだ。
太一よりも、誰よりも。

月が丸い夜に、夜空でも雲があるんだって気付く。
月が丸くなくたって、雲はある。
気付けないだけ。

私はいつも、気付けないだけ。

わがままに産まれなければ良かった。