真っ赤な林檎の皮をするする剥いていくと、中の実に将棋の駒の漢字がかかれている。
そんな、伝わりにくいしょーもない夢を見た。

都合よく、太一の夢を見たりできないものなのだ。
悲しいのは、しょーもない夢ばかり見ることではなくて、しょーもない夢の話を、誰にしたらいいか分からないこと。

適当な相槌を打つ太一は、遠くで野菜売ってんだろう。

「無事につきました」
最後に送ったメールに返事はなく、それ以来メールも電話もない。
太一はそういう奴だ。
もしかしたら私と同じように、メールと電話を待っているのかもしれない。

だけど私にも、太一にもそんな勇気はなくて、時間はどんどん流れていく。

実家に帰っても私は相変わらずだらだらしている。
親も、私がいてくれるだけで嬉しいのか、小言一つ言わない。
同居している姉夫婦に部屋をのっとられて、居間でゴロゴロする生活。

久々に会った学生時代の友人達も歓迎してくれたし、25歳で結婚は最近の世の中じゃまだ早いらしい。売れ残った仲間なんてわんさかいた。

女数人で集まって、ありふれた恋愛の話なんてのをしながら時間をつぶす。

「ゆかり、どんなのがタイプなの?いいのいたら紹介するよ。」

太一と離れたら、とびきりのお金持ちと愛のない生活をするんだ、なんて思っていたくせに、いざ現実となると

「音楽好きで、静かで誠実な人・・・かな。」

と、ちゃっかりしている自分に驚いた。