「見て、一つのケースに二枚入ってる。ゆかちゃんのこういうとこすごい嫌い」

荷造りという作業はなかなか進まないと、どこの国でも決まっているのだろうか。

ケースと中身のちぐはぐな大量のCDを段ボールにつめ、数少ない服も一緒につめる。


本当に、私はこの町を出ていくのだ。
またいつもみたいに口だけで終わってくれないかな、なんて、自分のことなのにそう思う。

「親もいい齢だし、そろそろ私も遊んでばかりいられないんだよね、まともに働いたりしなきゃいけないし。」

という、最もっぽい言葉は、自分と太一への当て付けのようなもので、決して真実ではなかったが、おばあちゃんも、太一でさえも

「ゆかちゃんはしっかりしてるね」

なんて、これまでの私の行いを棚に上げて誉めてくれた。

太一は荷造りを手伝いながら、何度も寝転んではさみしいなぁなんて言って私にしがみついてみた。

五年、いや、六年、とにかく長いこと一緒にいたんだもん、さみしがってくれないとこれまでの自分が惨めだ。

だけど、引き止めてくれるのを待ってる点で、私は惨めなのかもしれない。


扇風機だけじゃ、この部屋は暑すぎるよ。