おばあちゃんが、ピンクのシャツを着ていて、桃みたいと言ったら太一は蕪だといって怒っていた。

八百屋の軒下で、三人並んでスイカを食べた。
太一の吐いた種で、アスファルトに模様ができる。

寒くても、暑くても食物はおいしい。

どちらが好きか、天秤にかけるのは難しい。

スイカの汁でベタベタになった手でハンドルを握り締めてギコギコ走って家に帰ると、置きっぱなしにしていた携帯電話に、着信があった。

2番目のお姉ちゃん。

久しぶりに聞く声は、昔からちっとも変わらない高い声で、受話器を通すとキンキン耳に響いた。

「お母さん、心配してるよ。最近あんたの話しかしない。25でしょうが?先のこと考えてる?」

そんな話を、沢山した。母親とはまた違う。
近い存在だからできる話。

“私の人生なんだからほっといて”なんて言えるほど、自分の人生に自信なんてない。

私の人生なのに、私が一番わかっていない。
この町にいて、何がかわるかもわからない。
太一にすら、必要とされてない気がする。

お姉ちゃんと話しながら、声が震えた。

気付けば母親の時と同じで、空も部屋も暗くなっていて
玄関で鍵の開く音と、太一の姿が見えた。

どちらが大事かなんて、天秤にかけたところでわからない。